Workshop: Modern Japanese psychotherapies and theories of the state

京都大学人文研 共同研究「日本宗教史像の再構築」(11)ワークショップ

「近代日本の霊的な心身技法と国家論」

日時:2015年9月12日(土)午後1時~午後5時30分

会場:京都大学人文科学研究所1Fセミナー室1

報告①:並木英子(国際基督教大学)「『耶蘇教審判』にみる本田親徳のキリスト教認識」

報告②:野村英登(二松學舍大学大学非常勤講師)「陽明学の近代化における身体の行方」

報告③:栗田英彦(日本学術振興会)「岡田式静坐法にみる国家観―身体・技法・霊性―(仮題)」

報告④:塚田穂高(国学院大学)「霊術・身体から宗教・国家への跳躍―三井甲之の手のひら療治―(仮題)」

コメント: 永岡崇(日本学術振興会)・師茂樹(花園大学)

司会: 吉永進一(舞鶴高専)

京大人文研が主宰する「日本宗教史像の再構築」と共同研究において、本科研代表者が組織するワークショップが開催され、霊術/精神療法の技法と国家論の関係について、本科研メンバーも参加し報告を行った。

第一報告では、本田親徳の『耶蘇教審判』を取り上げ、そこに見られるキリスト教認識を分析した。政府の欧化政策や、明治16年から17年まで続いた教派を越えたキリスト教信仰覚醒運動に危機を感じて執筆された同書は、会沢正之(水戸学)の「民を惑わし国家を転覆するキリスト教」観を引用し、処女懐胎についての独自の見解などによってキリスト教を非倫理的なものとして描く一方で、平田篤胤の影響を受けた天御中主を中心とした宇宙観を打ち出した。

第二報告では、井上哲次郎によって国民道徳心を養成するものとして特徴づけられた陽明学が、学術的な議論の上では坐法や呼吸法により個人と自然を結びつける実践などの身体性を無視されていくこと、一方ではその後の静坐法ブームのなかでそうした身体技法が復活してくることが示された。

第三報告では、精神修養と身体技法を結びつけて知識人層に多数の支持者を得た岡田式静坐法の中に、「近代的」な背景としてのナショナリズムを見ると同時に、岡田がR.W.エマーソンに受けた大きな影響(自己の本質を自然の中に把握するという考え方など)に代表されるような、トランスナショナルな側面も見出していく。

第四報告では、歌人であり代表的右翼思想家である三井甲之が、精神療法の一種である臼井甕男の霊気療法をもとに編み出し、「国民宗教礼拝儀式」と位置づけようとした「手のひら療治」を題材に、国家論を持つ身体技法が「宗教化」へと到達していくさまが紹介された。

コメンテーターからは各報告者に対し、身体技法と国家観がなぜ、どのように結びつくのかに関して踏み込んだ質問がなされた。フロアからとの質疑応答においては、それぞれの身体技法とその言説に病因論や病の意味論が比較的希薄であることや、武芸との関連性の強さ、国家と身体のアナロジーのされ方といった新たに探究すべき課題が見出された。

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